自分の心も大切に
介護の仕事は感情労働
身体をよく使う仕事では、筋肉痛になったり関節が痛んだりと疲れを身体でダイレクトに感じることができます。また、頭をよく使う仕事でも、長時間集中しすぎていると考えがまとまらなくなってきたりぼうっとしてくるなど、そろそろ休憩しなければならないな、と感じられるわかりやすいポイントがあります。しかし、介護の仕事は他の業界に比べて感情面の負担が大きいと言われており、適切なタイミングで自分の疲れに気付くことが難しいようです。
利用者のためを思って支援を行っている中では、時に自分の感情は無視して相手の要求に応えるということも少なくありません。それを繰り返していると、自分の精神的な変化に鈍感になってしまい、本当はケアが必要な段階にあっても気付くことができず、そのまま燃え尽きてしまうこともあると言われています。
マインドフルネスとは
けがをして痛いと感じるのは、その部分を手当するなどして自分を守るための反応です。痛みがなければ、命に関わるようなけがをしていても気が付かず、手遅れになってしまうでしょう。心のけがも同じことなのです。自分の心の状況を把握できなければ、身を守ることができません。
近年、マインドフルネスという心の在り方が注目されています。自分が今何を体験し、感じたのかについて意識を集中し、それをありのまま認めるというものです。それ自体を「評価」するのではなく、「受け入れる」のがポイントです。例えば何かが起こって、それに対して嫌だなと思った場合、「今〇〇が起こって、それを私は嫌だと思ったんだ」と自分の心の動きをありのまま認めます。「嫌だと思ったのは悪いことだ」「これは嫌でも仕方ないだろう」などと否定や肯定をするものではありません。ただ単純に心の動きに集中してみることによって、感情のセンサーが知らないうちに鈍くなってしまうのを防ぐことができます。
評価しないことによって感情と距離を置く
マインドフルネスの実践方法を紹介します。まずは椅子に浅く腰をかけ、身体の力を抜きます。この時、背筋を伸ばすように気を付けましょう。軽く目を閉じたら、呼吸に意識を向けてみます。普段の呼吸では特に感じることがないかもしれませんが、鼻から空気が入って胸が膨らみ、吐き出すと胸がしぼむことなどをじっくりと感じて集中します。そのうちに、呼吸から意識がそれることがあるはずです。その時には「あの音が気になった」「あのことを考えた」「ここがかゆかった」など、その時に自分の意識がどう動いたのか確認し、良い悪いの評価はせず、また呼吸に意識を戻します。
初めは少し難しいかもしれませんが、慣れれば心が穏やかになっていくのを感じられるはずです。30分程度続けられるようになると、感情と距離を置ける感覚を味わうことができると思いますが、まずは5分くらいから始めてみましょう。イライラしたり、不安でいっぱいな時はぜひ試してみてください。