心穏やかに過ごせる場所へ
地域まるごと居心地の良い場所にする
もともと社会福祉法人には地域に貢献する活動が求められていましたが、近年特別養護老人ホームなどの介護施設による地域貢献が目立つようになってきました。学生ボランティアなどと連携して地域の子どもに対する支援を行ったり、普段の生活に不便を感じている住民をサポートしたりと、以前は見られなかったような役割を持つようになりました。介護職を志す人の中には地域貢献に役立ちたいと考えている人も少なくないようなので、こうした活動は今後さらに広がりをみせていくのではないでしょうか。
特に大きな施設では、設備や人材、支援のノウハウも豊富に持っていますので、多様な地域貢献活動を行うことができます。地域住民向けの介護講座や、誰もが参加できるイベントを開催したり、日々の買い物に苦労している住民向けにスーパーへの買い物バスを無料で運行するなど、その形はさまざまです。地域の力が重要になってくる今後において、施設それぞれがその特性を活かした工夫をしていくことが求められています。
皆が心穏やかに過ごせる「場」作り
上述のとおり、介護施設の持つ機能を活かせばさまざまな地域貢献を行うことができます。その対象は高齢者だけではなく、子どもや現役世代、普段の生活でなかなか居場所を見つけられずにいる人たちにも及びます。
とある施設では、引きこもりの人や発達障害を持つ人を受け入れています。特別なケアを行ったりするのではなく、ただその場にいてもらうことを心掛けているのだそうです。そうしてその場で過ごすことに慣れてきたら、少しずつ用事を頼むなどして、いつのまにかボランティアの立場になったり職員となる場合もあったということです。
このように、今までなかなか自分の望むような社会生活を送ることが難しかった人に対して、前を向いて歩きだすきっかけを作ることも介護施設には可能なのです。
「介護」が最終目的なのではない
介護施設の持つ役割は広がりを見せており、地域全体としての充実に少なからず関わるようになってきました。それは、介護施設の元々の目的である「介護を行う」ことだけがゴールではないことを意味しています。
もちろんこれからも新しい介護技術を共有したり、利用者にとって最適な介護を模索していくことは必要です。しかしそれだけでなく、高齢者と周りの人々との関係を作り、地域まるごと居心地の良い場所にするための1つの手段として「介護」があることを、改めて意識する必要がありそうです。