介護施設での取り組み例
介護職が働きやすい環境作り
兵庫県にある社会福祉法人甲山福祉センター<甲寿園>では、30年前も前から職員が働きやすい環境作りに取り組んでいます。例えば生理休暇、つわり休暇、子どもが病気になった際の休暇など、家庭や子どもを持つ女性にとって安心できる制度があります。また、年間を通して技術研修や他の施設との合同実践研修を実施したり、新人のためのフォローアップ制度なども取り入れており、その結果として新卒3年以内の離職率は4.8%と驚きの定着率になっています。
介護の仕事をしている人は一般的に、入職後3か月後、6か月後にモチベーションが低下すると言われています。このタイミングで職員の声をじっくり聞く機会を作ったり研修を行ったりすることによって、定期的に働く環境を見直す努力・工夫を行っていることからも、職員を大切にして共に成長していこうという事業所の見習うべき方向性が伺えます。
家族も含めて認知症の人を支える
「オレンジカフェなのはな」は、認知症の人やその家族を支援する集いの場です。神奈川県にある介護老人保健施設なのはな苑が年に3回、家族支援の一環として開催しており、毎回30名ほどが集まるそうです。
家族間の情報交換や意見交流にとどまらず、専門職から認知症ケアのコツや介護保険制度の活用法を学ぶこともできるので、認知症の人だけでなくその家族を思いやる支援を行っている施設として参考にしたい事例です。
介護ロボットで負担を軽減
千葉県にある特別養護老人ホーム松丘園では、「眠りSCAN」という介護ロボットを導入し、介護職の負担を軽減するだけでなく、ケアの質を高めることにも成功しました。
この施設では元々、利用者の転倒防止や徘徊予防を目的とした離床センサーのついたベッドを利用していました。しかし、上体を起こしたりベッドを踏んだ時にPHSにアラーム通知が来るというものだったので、職員はその度に部屋へ駆けつけ、詳しい状態を確認しなければなりませんでした。しかし眠りSCANでは、利用者の睡眠状況や呼吸などのデータをあらかじめ管理用に設定したパソコンから見守ることができるため、全てのアラームに対して慌てて対応することなく緊急度に合わせて順番に対応することができるようになり、スタッフの負担軽減につながったということです。
この事例は、千葉県の「介護ロボット導入支援事業」がきっかけとなっています。介護ロボットを導入する事業者に対して、補助金を交付するというものです。全ての地域で同じような制度があるわけではありませんが、する人もされる人も安心できる介護のため、これから先さまざまな支援事業が各地で始まるかもしれません。